多賀谷克彦の波聞風問 「社会人になって、あのときほど落ち込んだことはありませんでした」 NTT西日本で新規ビジネスの開発を担当する佐伯穂高さん(33)は出向時のことを感慨深く語ってくれた。一昨年4月から1年間、風景動画の配信サービス、ランドスキップに研修の形で出向した。 2015年設立のベンチャーで従業員は10人。二つ年下の下村一樹社長の補佐役として営業から新規事業開発、経営戦略まで、あらゆる業務を任された。佐伯さんは当時を振り返る。 「NTTの看板は使えない。仕事に前例もなく、上司が答えを持っているわけでもない。自信は打ち砕かれ、おれ、社会人として使えないのかなって……」 1カ月後、救われたのは下村氏の一言だったという。 「答えがない暗闇の中で、おれだって迷っている。間違っても仕方ないよ」。 巨大組織では聞けない、孤独な経営者のつぶやきだった。 佐伯さんは試行錯誤の末に生かせるスキルを見つけ、自分で納得できる仕事ができるようになった。以前の職場に戻っても「仕事の進め方、スピードが変わった」と感じている。出勤スタイルもスーツからセーターに変わった。 こうした出向のスタイルは「レンタル移籍」と呼ばれ、大手企業に少しずつ広がり始めた。仲介役を担うのが、同年に創業したローンディールという会社。社長の原田未来さん(41)は「当初はネット系の中堅から声がかかるかなと思っていた。意外や、今では大手を中心に業種を問わず20社以上から依頼がある」と手応えを感じている。人材の引受先も200社を超えた。 大手がベンチャーに何を求める… |
大企業がベンチャーに学ぶ人材育成 「自社仕様」の限界
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