フィリピン国家捜査局は13日、ネットメディア「ラップラー」の最高経営責任者マリア・レッサ氏を、インターネットを使った中傷の容疑で逮捕した。ラップラーはドゥテルテ政権批判を恐れない姿勢で知られ、政権によるメディアへの圧力を懸念する声が上がっている。
問題とされたのは2012年5月の記事。麻薬密輸などへの関わりがあると指摘された男性が「悪意をもって私をおとしめようとしている」として、17年になって被害を申し立て、フィリピン法務省が「サイバー犯罪法」に違反するとしてレッサ氏を告発していた。
ラップラーは、ドゥテルテ大統領支持のネット世論が偽アカウントから拡散していることや、政府による麻薬犯罪取り締まりで、犯罪に関わったとされる市民が殺されていることなどを批判してきた。
これに対し、ドゥテルテ氏は「フェイク(偽)ニュースの媒体」とラップラーを批判している。昨年1月には、ラップラーが米国の投資家に預託証券を発行して資金調達したことが、外資によるメディア経営を禁じる憲法に違反するとみなされ、フィリピンの証券取引委員会から企業認可取り消しを命じられた。同2月からは同社記者の大統領府取材が禁じられている。
ラップラーは13日、「我々はジャーナリストとしての仕事を続け、私たちが見聞きした真実を報じ続ける。脅しには屈しない」との声明を出した。(バンコク=鈴木暁子)