音楽ユニット「いきものがかり」や俳優の藤木直人さん、中越典子さんらが所属する芸能事務所「キューブ」(東京)が、裁量労働制を社員に違法に適用して残業代を払わなかったとして、渋谷労働基準監督署から是正勧告を受けたことがわかった。元社員の20代男性と、男性が加盟する社外の労働組合「裁量労働制ユニオン」が14日、会見して明らかにした。
同ユニオンによると、勧告は1月18日付。男性は17年4月から専門業務型の裁量労働制を適用された。仕事の進め方や時間配分を上司が指示できない働き方だが、男性は所属アーティストを支える雑務やグッズ販売を担当し、指示を受けていた。会社側も指示を認め、違法適用が認定されたという。
男性の残業は月200時間を超えることもあった。専門業務の種類は制作プロデューサーなどと労基署に届け出られており、実際の業務とかけ離れていることも訴えているが、会社側は否定しているという。
賃金減を伴う異動を拒否したという男性は18年12月末に解雇されたという。男性は「業界ではこの働き方が当たり前で嫌ならやめた方がよいと上司に言われた。低賃金と長時間労働に悩む人が声をあげられるようになって欲しい」と話した。
キューブは取材に「労基署の指導があったのは事実。真摯(しんし)に受け止め、労務専門の弁護士の力も借りて、適正な形になるよう努めたい」とコメントした。