2012年11月22日午後2時20分ごろ、「豊川信用金庫蔵子(ぞうし)支店」(愛知県豊川市)の1階に、サバイバルナイフを持った男(32)が押し入った。支店次長と職員、客の計5人を人質に籠城(ろうじょう)が始まった。
県警交渉人、悪夢の失敗 迫る炎、人質が…愛知ビル爆発
SAT隊員殉職、警備部と溝 捜査1課「国民には同じ」
現場を管轄する豊川署長は偶然にも、捜査1課長から異動した戸鹿島政晴(54)。過去2度の殉職事件で現地指揮本部に入った宇佐美孝一(54)が後任の1課長。ビル爆破事件で「交渉人」を務め、重傷を負った小西靖之(54)は、宇佐美を支える次長だった。
1課長を退任したばかりの戸鹿島の動きは素早かった。信金近くの自動車販売会社に頼み込み、現地指揮本部を確保。情報収集や機材搬入で捜査員が慌ただしく動き回るなか、指揮本部に「突入専門部隊」(通称Aチーム)の13人が到着する。戸鹿島は「あいつらの目を見た瞬間、これはいけるなって直感した。自信満々の目だった」と振り返った。
男は飲み物や食料、たばこなど…