米朝首脳会談が開かれたベトナムで、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の姿を記録する北朝鮮の撮影班の姿があった。シンガポールで初会談があった昨年6月よりスタッフの数を増やし、日本製の新型カメラレンズを導入するなど機材も増強。会談の成功を念頭に置いていた正恩氏らが、国内向けの大々的な報道に備え、取材態勢を手厚くしたとみられる。
正恩氏を激写せよ、徹夜の闘い 報道陣が爆買いしたもの
分かりやすい米朝首脳会談まとめ
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ベトナム北部のドンダン駅前に2日正午、1台の小型バスが横付けされた。中から出てきたのは、革靴に黒のスーツ姿で、胸に正恩氏の祖父の金日成(キムイルソン)主席と、父の金正日(キムジョンイル)総書記のバッジを付けた男性たち。写真用カメラを携える3人と、テレビ用のビデオを手にした4人。北朝鮮の撮影班だ。
ドンダン駅から特別列車に乗り込む正恩氏より30分ほど先回りし、海外メディアが立ち入りを禁止されたエリアを縦横無尽に動き回りながらその到着を待ち構えた。
シンガポールで会談があった昨年6月も、記者は正恩氏の動向に密着した北朝鮮の撮影班を複数回、目撃した。海外メディアの立ち入りが禁止された区域で独自に行動しながら、地元の警察や政府が「黙認」するのは前回も同じだが、今回は撮影班のスタッフの数が約2倍に増えていた。
装備もパワーアップしていた。
前回の会談にも来ていた長身の一人の男性は、当時はカメラを2台携えていたが、この日は最大4台を持ち歩いた。いずれも、日本のキヤノン製のプロ向け高級デジタル一眼レフカメラだ。
前回使っていたレンズは16―35ミリの広角ズームと8―15ミリの魚眼ズームで、接近した撮影のみを想定した装備だった。しかし、今回はそれらに加え、100―400ミリの望遠ズームを装着しているのを現場で記者は確認した。
この望遠ズームは2014年末に発売された新型で、ハノイ市内では別の男性も使用していた。一方、ドンダン駅で彼らから立ち位置の指示を仰いでいた別のカメラマンは、10年以上前に発売された古いタイプのズームレンズを使っていた。
機材の差や現場での動き方から、撮影班のなかにも何らかの序列があるようだった。
海外メディアは前回から400ミリ以上の望遠レンズで正恩氏が乗る高級車を狙ってきた。北朝鮮の撮影班も今回は望遠ズームを使って車列を撮った。シンガポールでは見られなかった光景で、撮影のバリエーションが増えている。
2日午後0時半すぎ、ドンダン…