たった1枚の布が、おしゃれなバッグに変身を遂げた。福岡で生まれた「A(ア)ZU(ヅ)MA(マ) BAG(バッグ)」がいま、国内外で注目を集めている。
考案したのは、福岡市中央区平尾のショップ「PARQ」のオーナー兼ファッションデザイナー植村浩二さん(40)。福岡で生まれ育ち、洋服好きが高じてファッション業界へ飛び込んだ。五つのブランドを展開し、店内には自身のメンズの洋服が並ぶ。
いまから6年ほど前。1枚の布地でバッグを作れないかと思い立った。ヒントになったのは昔ながらのあづま袋。みゆき袋とも呼ばれ、1枚の風呂敷や手ぬぐいの一部を縫ったり切ったりして、「包む」「運ぶ」といった機能をもたらす伝統の品だ。
小学生のころから剣道をやっていたこともあり、「日本の文化ってすげーなあと思っていた。もともと風呂敷やバンダナのたぐいは好きだったんですよね」。
それまではオリジナルの洋服や帽子を作ってきた。次はバッグだ。そう意気込み、縫い子さんの女性と2人で作り始めた。
「軽くて丈夫」「とにかくおしゃれ」。最初の試作を作ってから1週間で店頭に並べてみたところ、驚くほどいい反応があった。作るのは1日に数個。作れば作るほど売れていった。
1年半ほどで製造は追いつかなくなり、縫製を外注することに。だが、最初は各地の工場を回っても厳しい反応が多かった。「若造が、変なものを作っていると思われていたのかもしれませんね」
植村さんにとって、洋服づくりの哲学はデザイン=機能美であること。動きやすく着やすく、着心地の良さこそを日々追い求める。その思いのすべてをこのバッグへつぎ込んだ。
見た目も肝心。濃紺×ブルー、オリーブ×グリーン、ベージュ×マスタードのツートンカラーなど12種類で展開し、他にはないあか抜けた印象がぐっと増した。
これには訳がある。当初は青とマスタードの2色展開で、サイズも大きめのLサイズのみ。どちらかというと男性向けの色合いが強く、植村さんは、知人女性から「かわいいけど、これを持って(高級百貨店の)バーニーズへは入れない」と言われ、デザイナー魂に火が付いた。
人気は高まり、年間5千個以上…