青森県弘前市大森の静かな集落で11日未明に発生した火災は、6人が暮らす住宅をあっという間に炎でのみ込んだ。焼け跡からは4人の遺体が見つかり、家族6人のうち4人と連絡が取れていない。一家を知る近くの住民たちは安否を気遣った。
「孫が家にいる。助けて」。全焼した農業八代光弘さん(77)方の隣家に住む男性(70)は出火直後の11日午前0時過ぎ、八代さんの妻(69)がそう繰り返し叫ぶのを聞いた。「(八代さんの妻に)『しっかりして』と声をかけたんですが……。遺体が見つかり言葉がない。かわいそうなことになってしまった」と声を詰まらせた。
119番通報した別の男性(46)によると、八代さんの妻は寝間着姿に裸足で屋外に避難しており、泣き崩れていた。消防車が来るまでに八代さん方の屋根が焼け落ちるほどの火の勢いだったといい、「煙も見えないぐらい火柱が上がってどうすることもできなかった」と話した。
八代さんは、妻と、長女(46)、孫3人の計6人暮らし。孫は16~18歳の年子の男女という。県警は焼け跡から見つかった4人が、連絡の取れていない長女と孫3人とみて、身元の確認を進めている。近所の女性(78)は「(孫は)優しい子どもさんたちで、飼っている犬をよく散歩させたりしていた」と話す。
八代さんの親族の男性(74)は2月初旬に八代さん一家と会った。3月に学校の卒業を控えていた八代さんの18歳の孫に進路を尋ねたところ、その場にいたリンゴ農家の八代さんが「農園を継げよ」と言うのに対し、孫は「普通に就職するんだ」と答えたという。「孫たちも一緒にリンゴ農園の作業を手伝うなど本当に仲の良い家族だった」と話した。