コーヒーの香りやベーコンの香ばしい匂いで目が覚める。そんな理想のような生活を可能にする朝食ロボットを東大生が開発した。開発のきっかけとなったのは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の一場面だった。
開発したのは、調理ロボットを作る「コネクテッドロボティクス」(東京)でインターンをする東大生の男女3人だ。米テキサス州オースティンで開かれたIT・音楽・映画の祭典「サウス・バイ・サウスウェスト(S×SW)」の展示で披露し、外国人の注目を集めた。
民泊を想定
会場では、黄色いエプロンをつけたロボットがせっせと食パンをつかんでトースターに入れたり、ベーコンやアスパラを炒めたりしていた。自ら卵を割って、目玉焼きを作ることもでき、コーヒーまで入れてくれる。
目覚める時間にタイマーを設定すれば、時間に合わせて作ってくれる。ロボットには、食材や調理機材の位置を事前に覚え込ませ、人の手に頼らずに調理ができるようになった。
大学でロボットコンテストのサークル活動をしていた3人が、調理ロボットを製作するコネクテッドロボティクスにインターンで入り、自分たちで製品を開発した。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する朝食を作る機械に着想を得たという。
朝食の提供ができない民泊サービスのAirbnbでの利用を想定しており、大阪で今年の春にも実証実験を始める。開発者の一人で、大学3年生の犬塚悠剛(ゆうご)さん(20)は「目覚めたら朝食がそろっている。そんな世界を実現したい」と話す。
一人ひとりに合わせたお茶いれます
同じくS×SWに出展するベンチャー企業「LOAD&ROAD」(東京)は、一人ひとりの体調や周りの環境に合わせたお茶を抽出するポット「Teplo(テプロ)」を開発した。
テプロは、ネットにつながったIoT機器。計六つのセンサーを使い、心拍数や指の体温、温度・湿度、明るさ、周囲の音などを感知する。それらのデータに基づき、飲む人にあった最適な茶葉の抽出温度と時間を決める。
例えば、心拍数や体温が高く、周りが騒がしい場合は、少し低い温度で甘みが多いお茶を入れる。一方で心拍数が低く、周りが静かな場合は、より高い温度でお茶を入れる、といった具合だ。
専用アプリから飲んだお茶の味を評価することで、その人の好みを学んでいく。クラウドファンディングの「キックスターター」を通じて日米で販売しており、2020年に量産を始める予定だ。
スイッチ一つでお茶やコーヒーが出てくるような製品とは違い、テプロはお茶の抽出に5~10分程度の時間がかかる。河野辺和典・CEO(最高経営責任者)は「テクノロジーでもっとお茶はおいしくできる。ただ、お茶をいれて飲むだけでなく、少し時間をかけて、お茶を抽出するまでの過程も楽しんでもらえる体験を提供したい」と話している。(篠健一郎)