開幕投手は長いペナントレースで、一番最初の試合に先発登板する。背負うのは、名誉と重責。誰もが納得するエースに任せるか、若手の飛躍にかけるか。12人の顔ぶれから、唯一無二の一戦にかける監督の思いも透けて見える。
いつ決める
開幕投手の選考に最も悩まなかったのは、今季4年ぶりに復帰した巨人の原監督だろう。昨年11月25日、菅野の背番号が19番から球団伝統のエースナンバー、18番への変更を発表した流れで、「私のなかでは決まっている」と、12球団最速で2年連続5度目の開幕起用を明らかにした。
ただ、これは菅野が2年連続沢村賞の大エースだからこそのスピード公表。通常は状態を見極めたり、投手間での競争を狙ったりして2月のキャンプや3月のオープン戦期間中に発表する。阪神はガルシア(中日から移籍)、西(オリックスから移籍)との比較の結果、矢野監督がメッセンジャーと発表したのが3月3日。ちなみに、メッセンジャーの開幕投手は5年連続6度目で、外国人投手の最多記録を更新中だ。
伝え方にこだわる
投手のモチベーションを上げようと、伝達を工夫する監督もいる。日本ハムの栗山監督は2月9日、昨季のチーム勝ち頭(11勝)の上沢に開幕投手を伝える際、メッセージを添えて一冊の本を渡した。
奈良の山中を1日48キロ歩く荒行を千回続ける「大峯千日回峰行」を1999年に満行した仙台市の僧侶、塩沼亮潤さんの著書。読了した上沢は「うまくいかないこともあるが、野球でもそれをどう考えるか」。心を整え、開幕日を迎えた。
栗山監督の開幕投手伝達法は、いつも独特だ。大谷(現・エンゼルス)に初めての開幕投手を託した2015年は「ミスタープロ野球」こと、長嶋茂雄さんの誕生日の2月20日に手紙を渡した。16年はベーブ・ルースの誕生日でもある2月6日に大谷へ開幕投手を伝えた。さらに、今度は逆に大谷へ「何でもいいから俺に手紙を書いて」と依頼。日本一を誓わせた。
西武の辻監督も負けてない。「やっぱり、(開幕投手は)選手にとって名誉なこと。なにかできないか、って考えるよね」。昨季はキャンプ期間中の大安に合わせ、菊池(現マリナーズ)に「菊池雄星様 開幕投手」と書いた色紙を本人に渡して通達した。
今季は宮崎・南郷キャンプの最終日となった2月18日に、自らの発案でスタジアムのスコアボードに「開幕投手 多和田真三郎」と表示させた。ファンやチームメートへのサプライズ発表となった。多和田は円陣の中央に立ち、「日本一になるぞ!」と意気込んだ。
成長を促す
チームの中心投手を阪神に取られた中日とオリックスは、くしくも方針が重なった。中日・笠原、オリックス・山岡、2人ともプロ3年目の成長株。特に山岡は紆余曲折(うよきょくせつ)があった。
3月2日に開幕投手と発表されたが、22日のオープン戦で山岡が一塁カバーを怠り、西村監督が激怒した。「話にならない。ベースカバーを怠って、そのあと送球エラー。チームのみんなを引っ張っていかないといけないのに、もう1回考えます」。24日、山岡は西村監督と面談の結果、当初の予定通り開幕投手を務めることに。きついお灸(きゅう)を据えて、エース候補としての自覚を促した。(プロ野球取材班)
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【パ・リーグ】
西=多和田 初(2月18日)
ソ=千賀 2連続2度目(2月25日)
日=上沢 初(2月12日)
オ=山岡 初(3月2日)
ロ=石川 初(2月23日)
楽=岸 5年ぶり3度目(3月10日)
【セ・リーグ】
広=大瀬良 初(3月22日)
ヤ=小川 3年ぶり4度目(2月25日)
巨=菅野 2年連続5度目(昨年11月25日)
D=今永 初(3月21日)
中=笠原 初(3月19日)
神=メッセンジャー 5年連続6度目(3月3日)
注・日付は発表日