カブトムシの雌雄を見分けるための特徴である角。メスの場合はさなぎになる直前に、雌雄を決める「トランスフォーマー遺伝子」が作用して角が生えないようになっていると、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)などの研究グループが発表した。昆虫に角が生えるようになったメカニズムや、進化の過程の解明に役立つことが期待されるという。
研究は11日付の米科学誌「プロス・ジェネティクス」に掲載された。
カブトムシは孵化(ふか)後、10カ月ほどの期間を経てさなぎになり、さらに2週間ほどで羽化して成虫になる。基生研の森田慎一研究員(発生生物学)らはまず、カブトムシの幼虫を観察し、これまではっきり分からなかった、幼虫とさなぎの間の「前蛹(ぜんよう)期間」が5日間ほどと定義。オスの場合、前蛹期間に角のもとが現れ始めるという。
この時期にトランスフォーマー遺伝子が働かないようにすると、メスにも角が生えた。オスの場合は、見た目に変化がなかった。この遺伝子が、メスに角を生やさないように働くタイミングを詳しく調べると、前蛹期間が始まって間もない約29時間後だったという。
基生研の新美輝幸教授(分子昆虫学)は「前蛹期間初期の遺伝子の働きを解析すれば、角が生える際のカギとなる遺伝子を探し出すことができる」と説明している。(大野晴香)