本物に見た目がよく似たハチミツの「偽物」が出回っているのをご存じだろうか。ミツバチ研究者の高橋純一・京都産業大准教授(44)は、人工的に作られた偽ハチミツを見破る方法を開発した。
天然由来で健康的なイメージから人気があるハチミツだが、自給率は約6%と低い。中国からの輸入が多いが、中には偽物も含まれる。本物のハチミツに、小麦やイモのでんぷんから作った糖が混ぜられたものが多いという。
従来は製品中の糖の成分を調べて判別していた。だが、高橋さんは「検査をすり抜ける『高品質な偽物』も増えています」といい、いたちごっこが続く。
そこで、着目したのがDNA。本物のハチミツには、ミツバチのDNAが含まれている。その量はごくわずかで検出は難しかったが、DNAを増やす手法を応用し、分析に成功した。この方法はミツバチが蜜を採取した花も特定できる。「実は元々、花や産地を裏付けて付加価値を高めるために開発したものです」
野菜や果物の栽培で受粉を担うミツバチは欠かせない存在だが、病気で養蜂ミツバチの3割が死んでしまうシーズンもある。解決策に、強いミツバチをつくろうと試みている。
交配させては育てて性質を調べる地道な研究。実は病気に強いミツバチは既に誕生している。ただ、難点がある。「やたらと人を刺し、攻撃性が強い」。おとなしく刺さないミツバチもつくったが今度は働かない怠け者になった。
遺伝子組み換えではどうか。処理した卵を巣に戻すと、他のミツバチがなぜか細工を見抜いて退治してしまう。「人間の思うとおりにいかない行動の複雑さや知能の高さに、引きつけられますね」(野中良祐)