目標達成に向けて粘り強く行動を続ける「根気」は、脳がどう働くと長続きするのか。慶応大の田中謙二准教授(精神神経科学)らの研究グループが、マウスで実験を行い、論文を科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」オンライン版に16日発表した。
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チームは、マウスの脳に光ファイバーを埋め込み、不安などの感情を制御している大脳の腹側(ふくそく)海馬の活動を外部から操作することで、行動がどう変化するか実験した。
レバーを複数回押すとエサが出てくる装置にマウスを入れ、5回、10回、20回でエサが出てくる3パターンを実験。回数が増えるほどやる気を持続することが難しくなり、制限時間内に獲得する確率が下がった。
続いて、マウスがレバーを押している間に腹側海馬の神経細胞を興奮させた。5回のレバー押しでエサがもらえる時、成功確率が95%から80%に落ちた。反対に、海馬の活動を抑制したところ、5回のレバー押しでエサが出る課題では行動に変化がなかったが、10回でエサが出る課題では成功確率が73%から90%に、20回の課題で50%から83%になった。
チームは、腹側海馬の活動の抑制が根気を生み出すことに欠かせないこと、神経伝達物質のセロトニンによって抑制されていることがわかったとしている。
田中准教授は「腹側海馬の活動が抑制されているときは安心している状態で、根気が続いていると考えられる」と話す。継続的な通院など「根気」が必要な病気の治療法の開発に役立つことを期待しているという。(佐藤建仁)