世界貿易機関(WTO)の上級委員会が、東京電力福島第一原発事故を理由とした韓国による日本産水産物の禁輸を容認し、日本が事実上敗訴したことをめぐり、自民党が17日開いた部会で政府への不満が噴出した。
党水産部会と外交部会などの合同会議。被災地を抱える衆院宮城6区選出の小野寺五典前防衛相は「完全に外交の敗北だ。外務省はまったく油断していた。一体何をやっていたんだ」と怒りをぶちまけた。
青森1区選出の津島淳氏も「政府は捕鯨に続いてまた同じ轍(てつ)を踏んだ」と南極海での日本の調査捕鯨が2014年に国際司法裁判所で敗訴した時と同じだと指摘。水産部会長代理の岩井茂樹参院議員は「オール日本でやらなければダメだ。省庁縦割りでいいのか」と政府の体制を批判した。
外務省の山上信吾経済局長は「被災地の関係者の期待に十分応えることができなかったのは、遺憾で大変申し訳ない」と謝罪。一方で上級委が「日本産食品は韓国の安全基準を満たしている」との第一審の認定を維持したことを強調した。これに対し、会議に出席した全国漁業協同組合連合会の岸宏会長は「韓国に対して何らかの対応をとることができなくなったことは業者の期待を大きく裏切るもので、敗訴以外の何物でもない」と厳しく非難した。
岸氏や被災地の漁協幹部らは同日午後、首相官邸で菅義偉官房長官に、禁輸解除への戦略見直しや輸入規制で被害を受ける漁師への救済策、汚染水対策などを求めた。菅氏はその後の記者会見で「引き続き規制措置全体の撤廃を求めていく」と応じたと述べた。
上級委は11日に公表した報告書で、韓国が被災地など8県からの水産物輸入を全面禁止していることについて、WTO協定違反とする第一審を議論の過程に問題があったとして破棄、韓国の禁輸を容認した。