平成も残り5日となった26日、日本高校野球連盟の「投手の障害予防に関する有識者会議」がスタートした。
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第1回から活発な議論が繰り広げられた。4回という限られた機会だが、存分に意見を出し合って欲しいと思う。
その中で、使わないで欲しい「NGワード」がある。
一つは「プロが目標でない選手もいる」という主張だ。多くの球児が子どものころに抱いた夢は①プロ野球選手②甲子園出場に大別されるだろう。そのうちプロ入りできるのは、ほんのひと握り。大半は高校3年間が野球生活のハイライトになる。そこで達成感を味わわせてあげたいという考え方は理解できる。
だからといって、無理をして故障していいはずはない。日本高野連が投手の障害予防に取り組み始めた平成初期、当時の牧野直隆会長は「肩ひじを故障して自分の子どもとキャッチボールもできないような球児をつくりたくない」と話していた。
達成感と障害予防の両立が簡単でないのは承知の上で、大会日程の緩和や、練習での投球数管理も含め、あらゆる可能性を探ってもらいたい。
もう一つは投球数制限をしたら、「ファウルで粘る作戦が横行する」という意見だ。例えば1試合100球という制限ができたら、「意図的にファウルを打って相手の投球数を増やす作戦をとる」という声は現場の監督からも多く聞かれる。
相手投手の疲労を狙う作戦は「スポーツマンシップ」にもとる行為だ。高校野球が教育の一環であるなら、正々堂々とした戦い方を選手に教えなければならない。長く大切にしてきた精神でもあり、この機会に、改めて周知徹底してもらいたい。
平成の高校野球史は、障害予防の歴史でもあった。甲子園で投手の肩ひじ関節機能検査が始まったのは1993(平成5)年夏。延長の回数は2000年に18回から15回に短縮され、昨年から延長タイブレーク制が導入された。
そして、投球数制限も含めた議論は令和へと続く。有識者会議の座長になった中島隆信・慶大教授は「部活動のあり方や野球の指導法を、メッセージとして発していきたい」と語った。投球数制限の是非も含めた喫緊のルール作りだけでなく、将来を見据えた高校野球のあり方まで示してくれることを期待している。(編集委員・安藤嘉浩)