体操の全日本個人総合選手権は26日、今秋の世界選手権(ドイツ)の代表選考会を兼ねて群馬・高崎アリーナで開幕した。男子の予選では大会連覇を狙う谷川翔(順大)が85・566点で1位。2位は前野風哉(セントラルスポーツ)、3位に谷川航(同)。一昨年まで大会を10連覇していた内村航平(リンガーハット)は37位で予選落ちした。
女子は2015年以来の優勝を狙う寺本明日香(ミキハウス)が55・999点で1位。4連覇がかかる村上茉愛(日体ク)が2位につけた。
決勝は28日で、男女とも予選と決勝の合計点で順位が決まる。
東京五輪「夢物語。このままじゃ無理」
着地が決まった、と内村は思ったという。最終種目となった得意の鉄棒。「いつもの感覚で、(着地が)止まったと思って」
決めポーズを作ろうと突き出した両手はしかし、顔面とともに足元のマットに沈んだ。「もう、笑うしかないですよね」。37位。初出場した2005年以来の予選落ちが決まった。
昨秋から苦しめられていた両肩の痛み。練習が積めず、「不確かな自信を持ってやるしかない」と臨んだが、甘くなかった。2種目めのあん馬で落下、5種目めの平行棒では腕でバーを支えた瞬間に「腕に力が入らなくなった」。痛みのあまり、演技を中断した。
それ以上に、ミスを連発する自分に耐えられなかった。あん馬で落下した時点で「終わったなと思った」。平行棒の後には佐藤コーチから「ちゃんとやらないならやめた方がいい」と言われるほど、集中力は切れていた。
試合後は弱気な発言が続く。「何をしたらいいのか分からない。気持ちを高めて練習しているのに(痛みで)できない」。1年後に迫る東京五輪については「夢物語。このままじゃ無理」と言った。
個人総合で秋の世界選手権代表に選ばれることはこれでなくなり、種目別でも選出の可能性は低い。
ただ、それより心配なのは王者の心と体。「今は何もやりたくない」とも、「もう死ぬ気でやるしかない」とも。念願の自国開催の五輪まで、時間はそうない。(山口史朗)