世界最高齢のギネス世界記録を持つ116歳の田中カ子(かね)さん=福岡市。明治、大正、昭和、平成の世を生き、1日に始まる令和の時代も「長生きしたい」と夢を描いている。
公人中の公人・天皇の心のスイッチ 「公」から「私」へ
反日根強いオランダ、頭下げ続けた陛下(祈りの旅)
【詳報】平成最後の日、陛下が最後のおことば
田中さんは明治36(1903)年、現在の福岡市東区で生まれた。米国のライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功した年だ。
大正4(1915)年に尋常高等小学校を卒業後、子守の奉公に出た。19歳の時に初めて顔を合わせた、いとこと結婚。家業の「田中餅屋」を切り盛りした。
昭和に起きた日中戦争や太平洋戦争では、夫と長男が戦地に出征。精米などの力仕事をしながら、自分の子のほかに両親を失った親戚の子3人を育てた。終戦前には、23歳の養女を病気で失った。ノートには「薬も物もなくあわれでした」と記されている。次男の妻の禮子さん(84)=川崎市=は「戦時中は義母にとって一番つらかったでしょうね」と語る。
平成17(2005)年、102歳で福岡市東区の老人ホームに入居。大腸がんの手術もしたが、今も押し車を使って自力で歩き、一日の多くを入居者が集う食堂で過ごす。オセロを楽しみ、好物の炭酸飲料やチョコレートは欠かさない。体調の悪い人には「がんばりんしゃい」と声をかける。
そして令和の幕開け。田中さんにとって、どんな時代になるのか。「ここ(ホーム)に入って、幸せ。せっかくここまで来たから、一日でも長生きしたい」(伊藤繭莉)