埼玉県ときがわ町にある工場。足を踏み入れると、すぐに甘い香りに包まれた。
焙煎(ばいせん)された落花生を粉砕器に入れ、細かく砕く工程が続いていた。これを自家製のペーストに仕立てていく。水を一滴も入れず、保存料や着色料、香料も使わない。「だから、豆そのものの味を引き出せるんです」。案内してくれたダイショウの森本政英副社長(48)は言う。
同社はピーナツバターなどの製造・販売を手がけ、従業員約20人の小さな会社だ。ピーナツバターでは30年の歴史があり、売上高はこのところ増え続けている。2019年2月期は7.3億円と、4年前の4割増。好調な経営の背景には、会社のかたちを変えた大きな出来事があった。
「M&A(企業合併・買収)により、当社はヨシムラ・フード・ホールディングスに入ることになりました」
14年の年明け早々。当時の社長は社員を集め、こう宣言した。いきなりの発表に、営業主任だった森本さんは面食らった。
中小企業を次々と傘下に収め、毎年、売上高を約2割ずつ増やしている企業があります。実力はあるのに後継者不在で存続が難しい企業のM&A(企業合併・買収)により、グループ全体の成長につなげる「連邦経営」。その現場を取材しました。
社長は亡くなった創業者の妻。…