経世彩民 福田直之の目
1977年10月14日、上海の新聞に小さな記事が載った。
「我が国最初の高精度計量標準計器、空気圧力天秤」。軍の青年エンジニアが編み出した画期的な技術が紹介されていた。
しかし彼はその後、リストラに遭い、再就職した国有企業もクビに。自分で商売するしかないと、87年に会社を立ち上げ、通信機器の代理店となった。数十年後に世界を騒然とさせる企業になるとは、おそらくだれも想像しなかっただろう。
その企業の名はファーウェイ。新聞で紹介された青年エンジニア名は任正非。創業者でCEO。ファーウェイのカリスマだ。
「教祖」誕生?
通信機器で世界最先端の技術を持つようになったファーウェイを、中国人はプライドを持って「民族ブランド」と呼ぶ。
恩恵なくてもトランプ好き 米農家が抱える「破壊衝動」
経済という言葉の語源「経世済民」には「世をおさめ、民をすくう」という意味があります。原則、毎週火曜朝に配信するコラム「経世彩民」では、記者が日々の取材を経て思うこと、伝えたいことを色とりどりの視点でつづっていきます。
ただ、任氏は大のマスコミ嫌いで、その素顔は謎に包まれていた。ところが、米国が本気の「ファーウェイつぶし」にかかったのを受け、任氏はとうとう表に出る道を選んだ。
いま多くの中国人が任氏の発言…