香港社会を揺るがす「逃亡犯条例」改正案について、香港政府トップが事実上、成立を断念する考えを示した。だが、中国政府の「お墨付き」を得た政策だけに撤回は明言できず、歯切れが悪いまま。うやむやにして幕引きを図る考えがにじむが、民主派の反発は収まりそうもない。
香港中心部の立法会(議会)前では、改正案に反対する市民ら約100人が集まり、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の会見の中継を見守った。
高校2年生の女性(17)は「政府の言うことは信じられない。市民が求めているのは、改正案の即撤回だ」と反発した。
一方、林鄭氏の発言を評価する声も出ている。
会社経営の男性(40)は「はっきりと法案の失効を政府は受け入れると発言した。林鄭氏なりに市民の声を聞き入れたというメッセージだと思った。今後は市民と政府の断絶を修復してほしい」と、政府の取り組みを見守る考えを示した。
会見で、記者たちは「なぜ撤回とはっきり言えないのか」と、重ねて質問を浴びせた。それでも林鄭氏は「現状では改正審議は再開できないと認識している」「私の発言の意味を理解してほしい」などと繰り返し、「即時撤回」の言質を取らせなかった。
林鄭氏が撤回という言葉を封印…