韓国の鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防相は20日、北朝鮮漁船1隻が日本海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を越えて南下し、韓国海域を3日間にわたり航行しながら、把握できなかったとして、国民に謝罪した。北朝鮮漁船はNLLから100キロ以上南の江原道三陟(サムチョク)港で地元住民によって発見され、「たるんでいる」と厳しい批判を浴びていた。
韓国軍の説明によると、北朝鮮漁船は長さ約10メートル、幅2・5メートルの木造で、北朝鮮の漁民4人が乗っていた。9日に北部の咸鏡北道を出港、12日午前にNLLを越えて韓国海域に入り、鬱陵島の近くを通って、15日朝に三陟港の岸壁に停泊しているところを地元住民が発見し、通報した。北朝鮮漁民の1人は、地元住民に「脱北して、ソウルに住んでいるおばに電話したいので携帯電話を貸してほしい」と頼んだという。
軍はレーダーなどで北朝鮮からの不審船の南下に備えているが、住民の通報まで把握できなかったという。当初は軍が「漁船は海上で発見された」という趣旨の説明をしながら、その後、岸壁に停泊していたことが明らかになるなど、説明が変わったことも批判されていた。鄭氏は、軍内部で虚偽報告や隠蔽(いんぺい)行為がなかったかどうかも調査するとした。
一方、韓国統一省は、漁民4人のうち2人は北朝鮮に戻る意向を明らかにしたとして、17日に板門店を通じて送還したと明らかにした。(ソウル=武田肇)