西日本から東日本の太平洋側に停滞する梅雨前線の活動が活発化し、九州南部を中心に猛烈な雨が降る見込みだ。4日朝までの予想雨量は最大350ミリに達し、土砂災害や河川の氾濫(はんらん)の恐れがある。過去の豪雨災害でも降り始めからの雨量が数百ミリに達し、土砂災害が起きたケースも多い。十分な警戒と早期の避難が大切だ。
気象庁「大雨特別警報の可能性」 70万人超に避難指示
気象庁は3日午前に緊急会見を開いた。黒良龍太・主任予報官は数十年に一度の雨となり得る「大雨特別警報」発表の可能性を指摘。「命を守るため早めの避難を」と呼びかけた。
気象庁によると、九州南部では既に記録的な大雨になっており、降り始めから3日朝までの雨量は宮崎県えびの市で883ミリ、鹿児島県薩摩川内市八重山で678ミリ、同日置市で600ミリと、いずれも7月1カ月分の平年値を上回った。
今後、東シナ海から暖かく湿った空気と、朝鮮半島側から気圧の谷に伴う寒気が流れ込む影響で大気の状態が不安定化。九州北部では3日夕、九州南部では3日夜遅くから猛烈な雨のピークを迎え、4日朝までの予想雨量は九州南部で350ミリ、九州北部で300ミリ、四国で250ミリ、などとなっている。前線の停滞に伴い、6日ごろまで大雨が続く恐れがある。
近年は梅雨前線などによる豪雨が毎年のように発生している。
昨年7月の西日本豪雨では、西日本を中心に124地点で2日間の雨量の観測史上1位を更新。大きな被害が出た岡山県や広島県では2日間の雨量は300~400ミリに達した。
2017年7月の九州北部豪雨では福岡県朝倉市の気象庁の観測点で24時間雨量が545・5ミリを記録。このときは、突然の大雨に始まり、大半が降り始めから12時間以内に集中した。
12年7月の九州北部豪雨では、熊本県阿蘇地方、福岡県筑後地方などで4日間の総降水量が500ミリを超える大雨に。熊本県阿蘇市では、期間中に6時間で7月の降水量の8割にあたる459・5ミリが降るなどして災害が起きた。
一方、14年8月に広島市で土砂災害が発生した豪雨では、局地的な大雨に見舞われた。3時間で200ミリに達した地点もあり、土石流が発生した。
今回について、東京理科大理工学部の二瓶泰雄教授(河川工学)は、これまでの大雨で土砂に多量の水分が含まれており、今後は雨がしみ込まず川に流れ込む危険性を指摘する。「17年の九州北部豪雨を上回る雨量が予想され、土砂災害と河川氾濫に厳重な警戒が必要だ」。雨のピークが夜にかけて予想されていることから、「日中のうちに避難を終える必要がある」と話す。
気象庁は土砂災害や浸水被害の危険度の高まりについて、地図上で一定の領域ごとに5段階で色分け表示する「危険度分布」を、インターネットで10分おきに更新している。こうした情報の活用も必要だ。(桑原紀彦、小林舞子)