梅雨の合間をぬって、高校野球福岡大会は7日、久留米市野球場など7球場で19試合があり、1回戦が終わった。青豊は0―5から逆転勝利を収め、「最後の」夏にかける球児の思いが観客の心を打った。甲子園出場を目指すシード校の東海大福岡は11安打10得点でコールド発進。福岡中央は先制したが、強豪東福岡に及ばなかった。各球場では小学生による始球式もあり、大きな拍手が送られた。
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退部し復帰、成長の3安打 筑紫中央・信国流星選手
9点差の七回表1死。打席に入った信国流星君(3年)は、前打席と同じようにスライダーを狙って、3球目を振り抜いた。チーム最多の3安打目となる打球は右前にぽとんと落ちた。
信国君は3年生の夏の大会に出場する姿を、1年前には想像できなかった。新チーム結成後の8月中旬、ある「事件」が起きた。
公立強豪校との練習試合で、序盤にリードしながらも、最後は大差をつけられた。森山博志監督の目には、途中で試合を投げたように見えた。「勝ちたいと言っていたじゃないか。試合中に諦めるなら試合なんかする必要はないっ」。信国君は理不尽だと感じた。「ついていけない。もう辞めてやる」。同じようにモヤモヤした気持ちをぬぐえなかった当時2年生の18人全員が退部を宣言した。
引退か、選手を支える役に回るか――。騒動から1週間後、監督と話し合う機会を得た。「考えてから動くより、動いてから考えろ」と諭され、全員でチームに戻ることを決めた。
それからの信国君は変わった。練習を怠けることもなく、あいさつの習慣もついた。冬場のトレーニングも欠かさず、森山監督に「成長率ナンバー1」と言わしめた。
コールド負けを喫した試合後、信国君は「力を最大限出すことができなかった」と悔やんだ。森山監督は「後悔の言葉は練習に打ち込んできたからこそ出てくる。仲間のためにプレーしていた」とねぎらった。
理不尽だと感じたあの日から思いを新たにして臨んだ大会。「乗り越えた経験はこれからの自分を後押ししてくれる」。信国君はきっぱりと言い切った。(棚橋咲月)