茨城大会は8日、5球場で1回戦10試合があった。科技日立が29得点を挙げたほか、一時7点差を付けられた日立工が逆転勝ちするなど、6チームが2桁得点の猛攻を見せた。9日は3球場で1回戦6試合が予定されており、2回戦出場チームが出そろう。
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那珂湊は同点の七回裏、相手に1死二塁の好機を作られた。捕手の高林厚輝君(3年)はマウンド上の橋本健真君(同)を見つめながら、自分の胸を2回たたいた。橋本君と自分を落ち着かせるためだった。
その後、相手に安打を許し、1死一、三塁のピンチ。今度はマウンドに駆け寄って「打たれても次があるぞ」と声をかけた。位置に戻ると、どこにでも投げてこい、と両手を大きく広げた。
結果は連打を浴びたが、橋本君は「ジェスチャーで大きく見えたので投げやすかった」。
高林君は生まれつき軽度の難聴で、高い音などが聞こえにくい。野球を始めた小学3年の頃は、監督やコーチの指示が聞き取れなかった。当時は髪を長く伸ばして、補聴器が隠れるようにしていた。
その後、野球をしていた2歳上の兄に憧れ、同じように活躍したいという思いが芽生えた。丸刈りの兄を見て、小学5年で丸刈りに。消極的な性格を変えるため、自分から話しかけるようにもなった。
高校に入学して、言葉がよく聞き取れないこともあったが、部員のはっきりした声やジェスチャーのおかげで、会話はスムーズになった。野球に夢中になるにつれ、耳のことは気にならなくなった。
まとめ役の捕手として、コミュニケーションを大切にしている。試合中も「試合の後どこにいく?」と、たわいもない話で部員を落ち着かせる。今では監督からの指示を部員に伝えることも多い。
今日の試合については「力を出し切れたので、悔いはありません」。最後に「色んな人に支えられて野球を続けられました」と感謝のことばを口にした。(小島弘之)