限界を乗り越えようとする選手にとって、仲間の存在は大きい。それが兄弟、ましてや「双子」ともなればなおさらだ。生まれた時からずっと一緒だった2人が最後の夏を迎える。
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岩手県一関市の千厩高校の小林翔哉(しょうや)選手(3年)と弟の飛翔(つばさ)主将(同)は、20分違いで生まれた双子だ。ふとしたときに口ずさむ歌は一緒。けんかしても5分と経たずに仲直りする。「双子の中でも仲がいいんじゃないですかね」と口をそろえる。
小学2年生で野球を始め、今も同じチームでプレーする。打順は飛翔主将が1番を打ち、翔哉選手は3番打者。今春の県大会では、飛翔主将が三塁打で出塁し、翔哉選手の適時打で生還した。飛翔主将が「とにかく出塁して試合をかき回したい」と言えば、翔哉選手は「飛翔をホームにかえせるよう打った」。2人のプレーがかみ合い、チームに活気を与えた。
周りから「区別が付かない」と言われるほど、見た目が似ている2人だが、最近、守備がかみ合わないことが増えてきた。
翔哉選手は右翼手、飛翔主将は二塁手だが、打球がちょうど2人の真ん中にあがると、お互いに譲り合ってしまう。「弟の動きを見ていると、つい譲ってしまう」と翔哉選手。一方、飛翔主将は「ライトが捕る位置なので、遠慮してしまう」。互いの実力は理解しているが、ここぞで気を使いすぎていた。
2人は物心ついた時からいつも一緒だった。暇さえあればボールで遊んでいた。小中学校でバッテリーを組んでいたときも、目配せするだけで意思疎通ができ、相手の要求が理解できた。それがここにきて、プレーがそろわない。
どうすればチームに貢献できるのか――。自分たちのプレーを見つめ直すうちに気がついた。向き合うべき相手はいつも自分のそばにいることに。
子どもの頃から競い合ってきた。運動能力は差がなく、2人でやる競技はいつも決着が付かない。白黒はっきりさせようと続けるうちに、互いに実力を高めていった。
守備の課題は、お互いではなく打球を見て判断することで混乱を避けることにした。打球を捕ると判断するのは自分自身。相手も同じ判断をしてくれるという信頼あっての解決策だ。
時間を見つけてはキャッチボールやノック練習に費やす2人。チームは昨夏、3回戦で敗れた。チーム未踏のベスト4へ進出するため「2人でチームに貢献したい」と翔哉選手と飛翔主将。自分たちが力を合わせれば、きっと目標に届くと信じている。(御船紗子)