(12日、高校野球広島大会 広陵9―0西条農)
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開幕戦。広島の球児があこがれるマツダスタジアムのマウンドに立った、広陵の右腕・河野佳(3年)は西条農を相手に六回途中まで被安打3。三塁を踏ませないまま、マウンドを降りた。9―0で七回コールド勝ち。エースの投球としては十分な内容だった。
それでも、表情は浮かない。「硬いとは聞いていたけど、こんなにとは……」。マウンドに最後までなじめず、納得のいく投球ができなかった。
「修正しようと思ったんですけど……。自己評価は40点くらいです」。今夏は開幕戦と決勝しか試合がない舞台で、悔いを残してしまった。
もがく後輩を、1人のOBがバックネット裏から見守っていた。「まだ始まったばかり。もっと調子をあげてもらいたいですね」。そのつぶやきは、自身に言い聞かせるようだった。プロ野球広島の中村奨成だ。
2年前の第99回大会、甲子園で大会最多の6本塁打を記録した右打者は、ドラフト1位で広島入りしたが、2年目のここまで1軍の選手として、この舞台に立ったことがない。
球宴休みを利用し、1軍の本拠で行われる母校の一戦に、卒業してから初めて足を運んだ。「高校野球は一回きり。勝っても負けても最後まで楽しんでもらいたい」とエールを送った。そして、こうも言った。「きてよかった。しっかり刺激をもらったので、後半戦にいかしていきたいです」
河野は言う。「もう一回、ここで投げたい」。新市民球場として2009年に完成し、10年が経ったマツダスタジアム。すっかり広島の野球の中心となった場所を、それぞれが目指す。(小俣勇貴)