高校球児を応援するダンスCMが放送されている。今年で101回となる全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)を盛り上げるのは、私立精華女子高校(福岡市博多区)の生徒たち。関西以外の高校で、かつ女子高が出演するのは初めてだ。
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JR博多駅から徒歩15分の街中にある創立110周年の精華女子高。ダンスに加え、吹奏楽、マーチングでも全国大会に出場するほどのレベルの高さを誇る。特に吹奏楽部は全国大会金賞の常連校。週末は毎週のように演奏会や地域イベントに招かれている。
CMにはダンス部33人と吹奏楽部117人の計150人が出演した。吹奏楽部による大会歌「栄冠は君に輝く」に、ダンス部員とカラーガード隊が振り付けを合わせた。球児応援CMは2015年から続く第5弾だが、ダンスと吹奏楽のコラボも初めての試みだ。
撮影は4月中旬。2日かけて、福岡大会でも使用される春日公園野球場(福岡県春日市)と校舎内で行われた。球場ならではの難しさもあった。マーチングは普段、室内で披露するが、球場のバックネットが円形だったことで、フォーメーションの際の目印をとらえづらかった。強い風が吹き、カラーガード隊が空に向かって投げた長さ1・8メートルほどの旗をうまくキャッチできないことも。黒いローファーと白い靴下は、土ぼこりにまみれていた。
撮影用のクレーンも用意された「非日常」の空間で、約40テイクを重ねたが、屈託のない笑顔は最後まで切れなかった。映像の最後は101回大会をイメージした「101」の形に並び、「0」の中にハートマークをつくって締めた。
ダンス部部長の久保旬さん(3年)は中学生の時に兄の高校が甲子園に出場し、スタンドで応援した。ボールボーイを務めていた兄や球児の姿に「青春が詰まっている感じでした」。今回の出演決定を知ったときは感極まったという。
野球に初めて触れる生徒も少なくない。吹奏楽部の松尾桃歩さん(3年)は野球のルールを知らなかった。「『ピッチャーは頑張って投げているのに、どうして点は入らないの?』って思っていました」
今回の出演について吹奏楽部顧問の小川佑佳教諭は「部員によって温度差はあったかもしれないが、どんなイベントにも全力で臨む」と話した。松尾さんは「SNSで『甲子園』と検索するようになりました。人を応援するのが好きなので、思いが伝わってくれたらいいですね」と願う。
テレビCMはテレビ朝日系列を中心に放映中。朝日新聞社と朝日放送テレビの総合情報サイト「バーチャル高校野球」や、朝日新聞YouTubeでも公開されている。
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精華女子高のメンバーは6日に北九州市民球場(北九州市小倉北区)であった福岡大会の開会式に花を添えた。式前のプレイベントには、CMに出演したダンス部員が登場。昨年大ヒットしたUSAなど4曲でダンスを披露した。終盤に音響トラブルで曲が途切れるハプニングがあったが、機転を利かせた部員らは即興でアカペラに切り替え、最後まで笑顔で踊りきった。
ダンス部は、全国大会の出場や博多どんたく祭りへの出演など、多忙なスケジュールの合間を縫って練習を積んできた。部長の久保さんは、音響ハプニングにも「あれでチームが一つになりました」。
式では吹奏楽部が球児たちの入場行進の演奏を担った。熱気に包まれた球場で約40分間の演奏を続けた。
九産大九州の左翼手、田中裕大君(3年)は「ダンスがキレッキレでかっこよかった」。投手の恒吉幸司君(3年)は「甲子園で流れるあの曲(栄冠は君に輝く)を吹奏楽の生演奏で聞けて、感動した」。久留米商の三塁手、小北隼君(3年)も「ダンスを見て、すげえって思った。ブラスバンドがそろっていてすごかった」と話した。
精華女子高にとって高校野球大会での演奏は初めて。昨夏の100回大会で演奏するはずだったが、ヤフオクドームで予定されていた開会式は福岡県全体が豪雨に見舞われて中止に。「去年も演奏したかった」と口にした生徒もいた。
吹奏楽コンクールが7月下旬に迫るなか、朝早く集まって練習時間を確保した。部顧問の桜内教昭教諭は、野球の応援経験がない部員たちのために「高校球児の子どもがいる学校職員から、野球の応援に使う曲を教えてもらった」と話す。「球場の独特の暑さを体験させられたのは良かった。いい経験になったと思う」
音楽部長の池田徳羽子(とわこ)さん(3年)は「暑くて倒れる人もいるんじゃないかと不安でしたが、あっという間でした。応援も吹奏楽の役目の一つ。みんな『がんばって』という思いを込めて演奏しました」。
福岡大会は日程が順調に進めば、決勝は28日に久留米市野球場(福岡県久留米市)で行われる。優勝校は8月6日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する全国大会に出場する。(角詠之、川辺真改、宮坂知樹、棚橋咲月)