新型コロナウイルスの影響で、公開が延期になっていたディズニーの実写映画「ムーラン」が、紆余曲折を経て、動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」でオンライン公開されることが決まった。
ディズニーはこのほど、中国の人気女優・劉亦菲(リウ・イーフェイ)や鞏俐(コン・リー)が主演の「ムーラン」について、9月4日に「Disney+」で、PPV(ペイ・パー・ビュー)方式を採用して配信すると発表した。「Disney+」が利用できない国や地域では、映画館が開館できていることを前提として、映画館での公開となる。
ディズニーの公式微博(ウェイボー)を見ると、中国での公開日はまだ発表されていない。一部の観客は、「ディズニーの作品だが、ムーランは中国人の物語だから、中国の映画館でこの作品を見たい」という声を寄せている。
今年のディズニーの超目玉作である「ムーラン」は、公開日が数回延期になるなど、紆余曲折を経てきた。まず、3月9日に米国でワールドプレミアが開催された。そして、3月26日に世界の多くの国や地域で公開される予定だった。しかし、3月12日に英国プレミアが開催されて数時間後に、ディズニーは新型コロナウイルスの影響で、公開延期を発表した。
その後、7月24日に北米で公開されることが一旦決まっていたものの、同地域は新型コロナウイルス封じ込めには程遠い状態であったため、8月21日に再度延期。中国国内の映画館が営業を再開してしばらくすると、8月21日に公開される予定だったはずの「ムーラン」の名前が、ディズニーの上映計画リストから消えていた。
「Disney+」で「ムーラン」は、PPV方式で29.99ドル(1ドルは約105.56円)で配信される。米国の映画館で見るよりはるかに高い値段設定だ。世界で興行収入が最も期待できる北米の映画館が営業を再開できない状況下で、ディズニーは高額でのオンライン配信と、一部の地域の映画館での上映を組み合わせるスタイルで、「ムーラン」のコストを回収しようとしているものの、成功するかは今後の行方を見守る必要がある。
上海大学上海電影(映画)学院の副院長で、博士課程の指導教員・程波氏は、「全ての映画館が開館するのを待つことや、営業を再開した映画館だけで公開するわけでもなく、完全にオンライン公開に移行するわけでもない、オンライン配信と一部の地域の映画館での上映を組み合わせるというアンバランスな空間利用スタイルを採用した『ムーラン』は、実体と、オンラインのバーチャル空間の間で、バランスを取ろうとしている。そのようなスタイルは、『中間路線』、『オンラインとオフラインの最大公約数』の模索だ」との見方を示す。
オンライン配信に約3100円払う?
7月24日、中国の映画「征途 -英雄へのバトルロード-(原題:征途)」が、動画配信サービス「愛奇芸」で独占配信された。秒殺価格1.2元(1元は約15.15円)で配信されたほか、会員は12元で、非会員は24元で鑑賞することもでき、「ムーラン」のPPV方式の29.99ドルと比べると遥かに安い。一部の映画館で割引価格で鑑賞する程度の価格だ。
製作会社によると、「征途」の興行収入は配信スタートから72時間で、4262万元を超え、有料でオンラインのみでの公開となった映画としては、過去最高を記録した。
程氏は、「『征途』の数字にしても、『ムーラン』の『オンライン+映画館』のスタイルにしても、オンライン配信という『パイ』は今のところ、製作費1億元以上の大作のコストを回収できるほどにまでは膨らんでいないということを示している。このような目玉作は、収益が必要で、『■媽(Lost in Russia、■は国がまえに上に八、下に口の下線なし)』のようなプラットフォームが先に配信権を購入するというスタイルでしかそれが成し遂げられないかもしれない。それに、『■媽』は、コスト抑制が可能な現実をテーマにした作品で、最先端のテクノロジーを駆使した視覚効果が売りの重工業映画ではない」とする。
動画配信サービス「優酷」のオンライン映画の責任者は、「映画の映画館からオンライン配信への移行は、製作者に、さらに多くの配給の選択肢を与える。さらに、そのようなスタイルは、プラットフォームに、一層多くのコンテンツと収入を提供する。オンライン配信は、映画館の上映とオンライン配信の両方の成長を促進する多元化した映画配給体系となっている」との見方を示す。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年8月7日