ドイツでもW杯メンバー発表にサプライズがあった。04年欧州選手権ではエースだったFWクラーニーが落選。代わって入ったのが、それまで代表経験のないオドンコアだったから、ドイツ中が驚くのも無理はなかった。
ガーナ人の父とドイツ人の母を持つオドンコアは、13歳でドルトムントのユース入りし、18歳でブンデスリーガにデビューと早くからその才能は認められ、活躍もしてきた。
W杯開幕戦はラスト1分の出場。そしてこの日、0-0のこう着状態が続く中、後半19分にピッチに送り出された。クリンスマン監督が最初に切った交代カードだった。100メートル10秒台という俊足を生かし、右サイドに何度も深く飛び込んだ。厳しいチャージにもボールをキープし、クロスを上げる。ドイツの攻撃が次第に活性化した。
そしてロスタイム。大きなフィードを相手DFと一緒に追うが、オドンコアの俊足が上回った。守備陣に囲まれながらゴール前のヌビルへとパスを出し、劇的な決勝ゴールを導き出した。選出はサプライズだったが、活躍はさらに大きな驚きだ。賭けに勝ったクリンスマンは、強力なジョーカーをその手中に収めた。【辻中祐子】
毎日新聞 2006年6月15日 12時26分