27日閉幕した体操の第38回世界選手権(豪州メルボルン)で、日本男子はアテネ五輪で28年ぶりに奪回した団体総合金から続く「体操ニッポン」復活を強く印象づけた。個人総合で冨田洋之(セントラルスポーツ)、水鳥寿思(徳洲会)が金、銀に輝き、種目別あん馬でも鹿島丈博(セントラルスポーツ)が3大会連続メダルの銅。3年後の北京五輪へ好スタートは切った。
ただ、来年から10点満点が廃止されるなど採点法が変更され、今回の成績は即北京へ結び付かない。新採点法は、難度を反映した上限なしの「演技価値点」を導入するとともに、正確さを求める「演技実施点」が現行より厳しくなる。最たる例は、0.5点減点だった落下がより厳しく0.8点減点となることだ。
新採点法は、種目別の専門家への追い風になり得る。水鳥も「種目別で勝てなくなる危機感がある」と警戒する。76年モントリオール五輪個人総合銅のほか3種目でメダルの塚原光男団長が「個人総合でメダルなら、種目別も二つ、三つと取った」と懐かしがるように、日本は「全種目をこなしてこその体操」を伝統とする。一方で、「メダルはメダル」と割り切ってスペシャリスト養成に取り組み成果を挙げている国もある。
「なぜニッポンは個人総合にこだわるんだ?」という各国メディアの問いに「Japanese Philosophy(日本の哲学)」と胸を張って答えられるか。体操競技のあり方をも巡る新たな戦いが始まる。【堤浩一郎】
毎日新聞 2005年11月28日 17時10分