厚生労働省は6日、介護保険サービスの単価となる介護報酬の具体的な内容を示した。大半のサービスで基本料を下げ、特別養護老人ホームは約6%減と大きく下げる。一方、訪問介護など在宅支援サービスへの配分は手厚くした。深刻な人手不足に対応するため、介護職員の賃金も1人あたり月1万2千円上げる。平均では2.27%の単価下げとなる。4月から新たな単価を適用する。
6日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護給付費分科会で示した。介護サービスにかかる費用は総額10兆円に膨らみ、今後も制度を持続させるには介護費の抑制が欠かせない。一方で2025年度には介護職員が30万人足りなくなる見込みで、人手不足の解消には賃上げも必要だ。介護報酬の見直しではこれらの両立をはかった。
費用抑制に向けては、介護サービスの基本料のほとんどを引き下げる。各サービスの利益率に応じて下げ幅に差があり、事業者の利益率が8.7%と高い特養ホームは約6%下げる。利益率が10.6%だった通所介護(デイサービス)は約5%から最大で10%近くも下げる。
基本料の下げで費用を減らす半面、介護職員の平均月1万2千円の賃上げに必要な費用や、職員を手厚く配置して介護の必要度が重い人や認知症の人を世話するための費用は上乗せする。これには、昨年4月の消費税率の8%引き上げによる増収分を財源に充てる。
介護利用者の自己負担額でみると、サービスによって負担が減る場合と増える場合とが出てくる。厚労省の仮定に基づく試算では、基本料の下げ幅が大きい特養ホームなどの施設やデイサービスで、利用者負担が月に数百円減る。
訪問介護や24時間対応の定期巡回など、厚労省が拡充を目指す在宅サービスでは、賃上げなどの上乗せが基本料下げよりも大きい。利用者の負担は月に数百円増える。
介護事業者は、賃上げや重度者らへの対応を進めれば収入を維持できるが、従来のサービスのままなら大幅な減収となる。厚労省は介護報酬の見直しを通じ、より必要性の高いサービスの提供に事業者を誘導したい考えだ。