【ブリュッセル=小滝麻理子、ワシントン=川合智之】欧州連合(EU)首脳会議は12日、ウクライナ政府と親ロシア派武装組織の新たな停戦合意を受け、ロシアが合意内容を順守しなければ、16日にも追加制裁を実施する意向を確認した。各国首脳からは親ロ派の後ろ盾であるロシアを警戒する意見が目立った。ウクライナ政府への武器供与を検討する米国もEUと足並みをそろえている。
ブリュッセルで12日、記者会見に臨むウクライナのポロシェンコ大統領(左)とEUのトゥスク大統領=ロイター
首脳会議では和平実現へ各国が協力するとともに、ロシアに圧力をかけ続ける必要性を確認した。フランスのオランド大統領は「合意はもろい。実効性を確保しなければならない」と強調した。
ドイツのメルケル首相は記者会見で、ロシアが合意を守らない場合は「我々は追加制裁の発動を除外しない」と述べ、ロシアに警告した。首脳会議に参加したウクライナのポロシェンコ大統領は停戦合意について「今後のプロセスも簡単ではないだろう」と語った。
各国首脳の危機感の背景には、昨年9月の1度目の停戦合意が守られず、激しい戦闘が再燃したことがある。EUのトゥスク大統領は「合意は希望をもたらしたが、過去の悪い経験もあり、(ロシアに対して)我々は非常に慎重だ」と強調。ロシアの対応を見極めるために、現在発動を見合わせている親ロ派やロシア要人などへの制裁は予定通り16日に実施する考えを示唆した。
今後は停戦合意に基づき、部隊の撤退など緊張緩和に向けた取り組みの具体化が焦点となる。米国務省のサキ報道官は12日の記者会見でウクライナ政府への武器供与は「選択肢から排除していない」と強調した。
ケリー国務長官は同日、「言葉ではなく行動で判断する」とロシアをけん制した。一方で停戦合意を順守すれば「対ロ制裁の緩和を検討する用意がある」と述べた。独仏首脳が約16時間に及んだ交渉で合意を実現したことを称賛した。