ロシアの野党指導者、ボリス・ネムツォフ氏の殺害から6日経ったが、ロシア当局は逮捕はおろか、いまだに容疑者を1人も特定していない。ネムツォフ氏は3月3日に埋葬され、何千人もの人が最後の別れを告げるために、人権運動の記念館「サハロフ・センター」に足を運んだ。
ネムツォフ氏の最後の数日間は、噂と臆測の対象になっている。分かっていることと分かっていないことを以下に挙げよう。
ネムツォフ氏へ最後の別れを告げる人々が並ぶ。同氏のひつぎが安置されているサハロフ・センターで(3日、モスクワ)=AP
■最後の数時間に何が起きた
ネムツォフ氏はクレムリン(大統領府)の東壁に面したショッピングモール「グム」内のレストラン「ボスコ」で、ウクライナ人のガールフレンドのアンナ・ドリツカヤさんとともに遅い夕食を取った。2人は午後11時ごろにレストランを去り、赤の広場を歩き、モスクワ川に向かった。
ネムツォフ氏は川の南岸のマラヤ・オルディンカ通りにマンションを持っていた。ボリショイ・モスクボレツキー橋を100メートルほど渡ったところで彼は銃撃された。6発の銃弾を背中と頭部に浴び、間もなく死亡した。
■いつ殺されたのか?
警察は、23時35分に通報が数件あり、警官が10分後に現場に到着したと話している。テレビ局TVCが犯行を映した監視カメラの映像だとして公表した動画によると、殺害が起きたのは23時31分で、警官は約12分後に現場に到着した。
■目撃者はいたのか?
ドリツカヤさんは2日以上、自宅軟禁に似た状況に置かれ、3月2日にウクライナに帰国した。ドリツカヤさんはロシアをたつ前のテレビ局のインタビューで、自分は犯人を見ていないと述べ、ただ弾けるような音を聞いた後でネムツォフ氏が倒れたため、殺人犯は背後から来たに違いないと語った。
TVCが公開した監視映像から。殺害の数秒前とみられる(2月27日)=ロイター/TV Centre
犯人は橋の下の道路から吹き抜けの階段を上って現場に来たと考えられている。犯人の逃走については、ドリツカヤさんは白い車を見た記憶しかないと語った。
■証拠と手がかりはあるのか?
警察は2月27日夜に現場を封鎖し、現場検証を行ったように見えた。だが、朝が来る前に、清掃要員が高圧洗浄機を使って一帯を洗い流した。当局は後に、犯罪の痕跡はすべて雨で洗い流されたと語った。