ブラジルの裁判所が公開した文書の概略は、ペトロブラスの汚職スキャンダルで、賄賂の支払いがスイスの銀行口座経由で行われた疑いがあるというものだった。
ブラジル最大の汚職事件に発展しつつある今回の事件の重要参考人でペトロブラスの元幹部のペドロ・バルスコ氏がパラナの裁判所に提出した陳述書には、同氏が推定1億ドルの賄賂の一部をスイスの複数銀行の口座を介して資金洗浄したと記されている。
ペトロブラスの造船所で働く作業員=AP
利用したとされる複数の銀行の一つはサフラ銀行である。バルスコ氏はブラジルを拠点とする石油ガス産業コンサルタントのフリオ・フェールマン氏と同行の行員だったデニーズ・コス氏の「手助け」を受け、同行で口座をいくつか開設したと主張している。
■政治家、巨額の賄賂受け取った疑い
ペトロブラスの汚職事件を捜査しているブラジルの検察は、ペトロブラスの元幹部と政治家――大半が連立与党だが――が同社の請負業者と共謀し、契約の見返りに数百万ドルの賄賂を受け取っていたと主張している。
ブラジルの検事当局は最高裁判所に対して今週、54人の取り調べ許可を申請した。この大半が政治家だ。ブラジルでは、最高裁判所だけが会期中の国会議員を起訴することができる。
ペトロブラスの汚職事件でスイスの銀行口座が利用されたという疑惑が出たことで、ブラジルは同国民によるスイスのHSBC経由の租税回避行為に対する捜査を強化している。これに先駆け先月、スイスのプライベートバンキング部門の富裕層顧客が租税回避を行った疑いで、ジュネーブのHSBCオフィスが検察により強制捜査された。
「ブラジルはスイスHSBCの口座保有者数で第4位を占める」と述べるのは、野党ブラジル社会民主党党首のアエシオ・ネベス氏だ。同氏はこれに関し、議会による調査を求めている。
スイスの検事当局は、スイスとブラジルの検察がペトロブラスが関与する資金洗浄についての捜査を昨年4月から連携して行っていると述べた。
スイス当局は「捜査が進行中であるため、検事当局がこれ以上の情報を提供することはできない」と述べた。
バルスコ氏は検察とのリニエンシー合意(減免制度)の一環として作成した裁判所への陳述書に、1997年にスイスのリパブリック銀行に口座を開設したが、その後BBAクレディタンシュタルトに切り替えた後、2003年にはサフラ銀行に口座を開設したと記載している。