東日本大震災で大きな被害を受けた東北の沿岸部では11日、厳しい冷え込みのなか、家族や友人を失った人たちが早朝から祈りをささげ、復興への思いを新たにした。
津波で亡くなった知人の冥福を祈る男性(11日午前、仙台市若林区)
7メートル近い津波に見舞われた宮城県石巻市の門脇地区。一帯は家屋の基礎だけを残した更地が広がる。「がんばろう!石巻」と書かれた看板近くに設けられた献花台には犠牲者の遺族らが次々と訪れ、花を手向けた。
さいたま市の男性(66)は、営業先で津波に流された長男(当時28)の冥福を祈った。震災後に会社を辞め、長男を捜したが今も行方は分からない。「気持ちがあの日にとどまったままでは、息子は『何をしてるんだ』と言うだろう。少しずつでも前を向きたい」と話した。
福島県いわき市の沿岸部では約330人の死者・行方不明者が出た。被害が大きかった久之浜地区に住む松本文男さん(66)は漁港を訪れ、海から昇る太陽を見つめた。震災の年に母親を亡くし、妻は体調を崩して入退院を繰り返すようになった。寒風に身を縮めながら「失った生活を取り戻すのは難しい」と小さくつぶやいた。
漁港からは日の出とともに漁船が沖へと向かった。東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で本格操業はまだ遠い。漁師の男性(64)は白い息を吐きながら「仲間に安らかに眠ってもらうためにも、早く自由に漁ができる海に戻ってほしい」と願った。