【北京=大越匡洋】中国国家統計局が11日発表した1~2月の主要経済指標によると、工業生産が前年同期に比べ6.8%増と、リーマン・ショックの影響で生産が落ち込んだ2009年1~2月(3.8%増)以来、6年ぶりの低い伸びに鈍化した。中国指導部はインフラ整備の加速や追加の金融緩和で景気の腰折れを防ぐ構えだが、先行きの視界は晴れない。
中国政府は金融政策に加え、インフラ整備で景気を支える(重慶市の橋梁建設現場)
中国では春節(旧正月)の連休時期のずれがあるため、1月と2月の主要経済指標は累計で公表するのが慣例だ。1~2月の工業生産は昨年通年の水準(8.3%増)から減速した。特に、粗鋼、板ガラスなど設備過剰を抱える産業の生産が前年の水準を下回った。
同時に発表した建設・設備投資の動向を示す固定資産投資は13.9%増と、伸び率が14年通年の水準(15.7%)から大きく縮小した。1~2月の不動産販売額が15.8%減と大幅に落ち込むなど住宅市況の不振が響き、企業の投資や生産の低迷へと波及している。
春節の連休中に日本などでの「爆買い」が話題になった個人消費も、国内は盛り上がりを欠く。1~2月の社会消費品小売総額(小売売上高)は10.7%増と、伸びは昨年通年の水準(12%増)から縮小した。反腐敗運動のあおりで高額消費が振るわない。
2月の消費者物価指数は1%台の上昇にとどまった。企業間の取引価格である卸売物価指数は前年同月比4.8%下落し、下落幅は7カ月連続で拡大した。中国社会科学院の李揚副院長は「中国にもデフレのリスクは存在する」と指摘する。
中国政府は今年の経済成長率の目標を「7%前後」と設定し、昨年の実績(7.4%)よりも減速を織り込む。一方で、鉄道、水利施設の整備にそれぞれ年8千億元(約15兆2千億円)以上を投じ、景気を支える方針だ。昨年11月から緩和方向にカジを切った金融政策も、一段の利下げなどに踏み切る公算が大きい。
景気の減速は税収の伸び悩みを招く。地方政府が抱える借金の返済に支障が出かねないため、中国財政省は11日までに地方政府の返済負担を軽くする施策をまとめた。返済期限が到来する債務の一部について、新たに地方債の発行による借り換えを認める特例だ。