世界的な金融緩和の流れの中、デンマークで「マイナス金利の住宅ローン」が出たと話題になっているが、実は日本でも実質的に同じことが起きている。
現在最も低利なのは、イオン銀行の変動金利で0.57%。こうなると、現金を使わずに、あえて変動金利を使って全額ローンを組んだほうが得だということになる。
■金利負担以上のお金を給付
変動金利型を利用する際には十分な注意が必要だ
まず0.57%で住宅ローンを組むと、借入残高の1%が10年間、戻ってくる(住宅ローン控除)。さらに、消費税8%が適用される住宅を取得すると「すまい給付金」で最大30万円もらえ(http://sumai-kyufu.jp/)、2014年12月27日以降に工事請負契約をした家で要件を満たせば、「住宅エコポイント」として最大30万円分のポイントをもらえる。(http://shoenejutaku-points.jp/user/apply/)。
つまり、お金を借りて金利を支払うと、金利以上のお金をもらえるという「マイナス金利」と同じ効果が働いているわけだ。こうした局面では、現金を持っていても、あえて住宅ローンを組むのが正解だ。
■変動金利の利用には注意
またなにより相対的に高利な固定金利より、変動金利のほうが元金支払いのスピードが速い。ただし、変動金利で組んだ場合には、言うまでもなく十分な注意が必要。豊富な手元資金があれば、金利が上昇し始めたら返済してしまえばよいだけだが、十分な手持ち現金がない人が組んでしまったら取り返しのつかないことになりかねない。
3000万円を金利0.57%で借りた場合(返済期間30年)、毎月のローン支払額は9万681円で、その内訳は元金7万6251円、利息1万4430円。総返済額は3264万5174円で総利息は264万5174円となる。
このとき、例えば金利が2%上がったらどうなるだろうか? 3000万円を金利2.57%で借りると(返済期間30年)、毎月の返済額は11万9631円(元金5万5381円、利息6万4250円)で、総返済額は4306万7155円に膨らむ。毎月のローン返済額は2万8000円、利息総額は1000万円以上も増えてしまうのだ。
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■「未払い利息」がたまっていく
実際には金利上昇時の支払い上限としてのいわゆる「キャップ制度」があり、毎月の支払額はいきなり1.25倍超にはならないが、いずれにせよ1.25倍を超える部分は「未払い利息」として蓄積され「最後にまとめて支払うこと」とされているのが一般的な住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)だ。
そもそも、金利が上昇し始めたからといって、容易に固定金利へと借り換えができるとも限らない。住宅ローン金利はまず、長期金利に連動する固定金利が上昇し、後になって短期金利に連動する変動金利が上昇する。変動金利が上昇し始めたタイミングではすでに固定金利が相当程度上がっているものとみるべきだろう。
■いずれ金利は上昇する
アベノミクスは成功しても失敗しても、いつかどこかで必ず金利は上昇する。成功して景気が良くなれば当然金利は上昇。失敗すれば国債に対する市場の信認が失われ、国債価格は下がりやはり金利は上昇すると考えるのが自然だろう。変動金利は政策的にある程度はコントロールできるが、それでも市場相場から過度に離れるには無理があろう。
住宅金融支援機構が今月4日に発表した「民間住宅ローン利用者の実態調査」によると、変動金利の利用率は約40%(14年11月・12月期)と、依然として高い水準にある。メリットとリスクを十分に理解した上で利用することが必要だ。