「偉大なリーダーだった」。23日、世界を駆け巡ったシンガポールの初代首相、リー・クアンユー氏死去のニュース。日本国内の華僑やゆかりの人らは「建国の父」と呼ばれたリー氏の人柄をしのび、死を悼んだ。
在日華僑らの子供が通う「神戸中華同文学校」(神戸市)の林同福理事長(69)は約20年前、来日したリー氏が同校で講演した姿が印象に残っている。子供たちが理解できるようゆっくりとした口調で「世界に目を向けなさい」と語りかけたという。子供たちの関心をひき付ける存在感に「偉大なリーダーだと実感した」と振り返る。
リー氏は各国に散らばる華僑の結束や交流も呼びかけた。林さんは「リー氏の精神を継ぎ、華僑社会の発展に力を尽くしていきたい」と話した。
腫瘍学の権威で京都大を定年退官した後、シンガポール国立大教授を務める伊藤嘉明さん(76)は、2006年10月に同国で開かれた懇談会でのやり取りを懐かしむ。「医学生物学の研究をもっと発展させたい」と意気込むリー氏に招待された。
経済や歴史など様々な分野について意見を交わし、「シンガポールの成長の源は効率性にある」と説く姿にリーダーとしての強い自負を感じた。日本のすしはリー氏の大好物で、懇談会場には日本人の職人を呼んですしのカウンターが設けられていたという。
伊藤さんは「シンガポールが経済大国に育ったのはリー氏の指導があったからこそ。偉大な人物を失い、とても悲しい」と話していた。