作家の三島由紀夫(1925~70年)が64年の東京五輪を取材した際のノート1冊を山梨県山中湖村の三島由紀夫文学館が保管していることが23日、同館への取材で分かった。五輪の熱気や息遣いが伝わり、スポーツの祭典を楽しむ様子がうかがえる。
三島は当時、新聞社の依頼で五輪を取材。ノートの表紙に「Olympic」と記載し、開会式と閉会式の様子や、重量挙げ、バレーボールなどの観戦が丹念に記されている。「決定版三島由紀夫全集」(新潮社)にも未収録だった。
開会式で聖火リレーの最終ランナー、坂井義則さんが聖火台へ向かう様子を「手を高く掲げて(三時十分)聖火台の横に立つ。笑つたやうだ」と克明に記録。重量挙げで金メダルを獲得した三宅義信選手については「バアにさはつてから、永いこと息をためる。そして上げる。見事に上げる。大拍手」などと描写している。
村が90年代に遺族から購入した資料の中に紛れているのが見つかり、昨年一度同館で展示。その後、近畿大の佐藤秀明教授らが読解した。
同館の松本徹館長は「文学的に高い文章を書こうとしながら、スポーツを客観的に捉える視点が分かる」と話している。
ノート全文は24日から同館で公開される。〔共同〕