安倍晋三首相は2日、首相官邸で開いた経済界、労働団体の代表との政労使会議で、中小企業に「好循環実現に向けた賃上げに最大限の努力をしてもらうよう要請したい」と述べた。賃上げを大企業から中小に波及させるよう目指す。円安による原料高を価格に反映しやすくすることで一致し、政府と経済界が取り組む対策をまとめた。政府は中小に過度な負担を強いることがないよう下請法に基づき、9月までに約500社の大企業に立ち入り検査するなど、監視を強める。
経団連は会員企業に、取引先の中小企業との間であらかじめ、原材料費が高騰した際の取引価格の決め方などを合意しておくよう呼びかける。
全国中小企業団体中央会の鶴田欣也会長は終了後、記者団に「(賃上げは)当然、やるべきだ」と述べ、全国の関係団体に要請する考えを示した。
経団連の榊原定征会長は記者団に「しっかりと価格転嫁をし、中小でも賃上げできる環境をつくっていくことが大事だ」と述べた。
政労使会議はこれまで秋から冬にかけて開催し、翌年の春季労使交渉での賃上げを要請してきた。この時期に首相自らが中小企業の賃上げ要請に踏み切るのは、大企業に比べて中小の賃上げが進みにくい実情を考慮したためだ。
経済産業省の調査では2014年度に賃上げした大企業は9割を超えるが、中小企業は約65%にとどまる。ベースアップに踏み切った大企業は46%だが、中小は23%にすぎない。
15年の春季労使交渉では多くの大企業が14年を大きく上回るベースアップや一時金の引き上げに動いている。政府や経済界、労働団体が一体となって取り組む姿勢を見せることで、夏にかけて中小が賃上げに踏み切ることを後押しする。