中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)は携帯電話基地局などの通信設備で世界2位、スマートフォン(スマホ)で同4位に上り詰めた同国を代表するハイテク企業だ。その競争力の源泉は研究開発。中国企業の多くがM&A(合併・買収)による成長をめざすなか、売上高の10%以上の資金を毎年投じ続けてきた同社の開発の最前線に迫った。
■異例の液冷式
「通信サーバーの常識を打ち破れ」
横浜ベイブリッジが一望できるJR横浜駅近くのオフィスビル。一見すると普通のビルだが、高層階に入居するのは華為の「日本研究所」だ。日本人と中国人が半々の95人の技術者が集結する。そこで新規開発プロジェクトが始動した。
華為技術の日本研究所の羽賀元久・主幹エンジニアが開発を進める液冷式の通信用サーバー
そのプロジェクトを率いるのは14年7月に華為に引き抜かれたばかりの主幹エンジニア、羽賀元久だ。日本の電機大手で働いてきた技術者で、新たな冷却技術などを発明してきた経歴を持つ。空冷式が主流のサーバーでは異例の液冷式を導入し、世界最高性能のサーバーを開発しようと掛け声をかける。
「やっぱりサーバーのサイズは変更しない」
「先週はサイズ拡大を認めたではないか」
「顧客の利便性を考えた結果だ」
「一緒に解決方法を考えよう」
日本研究所の午前9時。それまでに出社した研究者らはコーヒーを入れたり、朝食を食べたり、それぞれの時間を過ごすが、会議が始まるとスイッチが入る。日本企業と異なり、事前の根回しは一切ない。中国・深圳の本社や北京の研究開発部隊なども交えた会議では、激しい応酬が続く。
「朝令暮改は当たり前」(羽賀)。それぞれの意見を戦わせて、相手に理があると判断したら、すぐにシャッポを脱いで、問題解決のために協力する。「技術開発のための技術開発はやらない。顧客のために、どんな製品を作り出すのか。製品のイメージがはっきりしている」と羽賀は打ち明ける。
日本研究所では、日本、中国、米国の特長が融合している。華為の技術開発は、米IBMが提供する統合製品開発システムで総合的に管理する仕組み。そこに、競争が激しい中国で育まれた日夜を問わずにがむしゃらに突き進む推進力や実利主義、日本の細部までこだわる丁寧さが光る技術力が加わる。