理化学研究所の田中啓治チームリーダーらは将棋の棋士が直観的に戦略を決定する際と次の一手を決める際は、脳の活動する場所が異なることを突き止めた。戦略を決定するときは大脳の中央部にある帯状皮質と呼ぶ部分を中心とするネットワークが働いていた。経営者も同様の仕組みで直観的な戦略決定を下している可能性があるという。
日本将棋連盟、富士通などとの共同成果で米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に21日掲載される。
人は複雑な状況の中で最初に戦略を決め、次に細かい具体的対応を決める。実験は攻めの手と守りの手の区別が明確な将棋を活用した。アマチュアの有段者17人が参加、脳の活動を調べる機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)の中で将棋の問題を解く様子を観察した。
有段者にはまず戦略決定するか、具体的な手を考えるか画面上で指示される。その後、盤面を4秒提示するなどした。各人に戦略的と具体的な決定課題の計120問を順不同で解いてもらった。
戦略を決める脳の領域と具体的な手を決める領域は異なっていた。また、攻めた方がよいときは脳の帯状皮質の後部、守った方がよいときは帯状皮質の前部がよく働き、それらの情報が前頭前野という部分に伝わり、最終的に攻守を選んでいた。