第一三共は21日、保有するインド後発医薬品大手サン・ファーマシューティカル・インダストリーズの全株式を約2000億ルピー(約3800億円)で売却したと発表した。売却で得た資金は新薬獲得や株主還元などにあてる方針だ。第一三共は先進国と新興国の両方の市場を取り込むことを目指してきたが、今後は先進国シフトを強めることになりそうだ。
第一三共は2008年にインド後発薬大手のランバクシー・ラボラトリーズを約5000億円で買収したが、直後に品質問題が顕在化した。その後、サンが株式交換によりランバクシーを吸収合併したため、第一三共はサンの大株主になっていた。今回、インドの証券取引所を通じ、サンの出資比率の約9%にあたる2億1496万株を売却した。
第一三共は株式売却で得た資金をもとに、先進国市場の攻略に必要な新薬の品ぞろえを拡充する見通し。重点領域と位置づけるがんや循環代謝などの治療薬が対象になりそうだ。
サンの全株式売却により、当初予定していた取締役の派遣は取りやめる。ただ東南アジアや南米などで実施している販売面での提携関係は今後も続ける。
21日の東京株式市場では第一三共株が前日比4%高となり、年初来高値を更新した。野村証券の漆原良一氏は「新薬ビジネスを強化する姿勢を鮮明にすることが市場の評価を高める条件だ」と指摘した。