厚生労働省が30日、終戦後に旧ソ連に抑留されて死亡した日本人の名簿を公表した。遺族らは貴重な情報と歓迎する一方、「公表がもっと早ければ」との声も上がっている。
〈氏名 若杉初枝〉
名簿には日赤の従軍看護婦として派遣され、北朝鮮で亡くなった新潟県出身の女性とみられる名前があった。
「初枝さんはどんな人だった?」。新潟県見附市の特別養護老人ホームで、初枝さんの弟、若杉不二臣さん(84)は親族の問いかけに「思い出せない」と困ったような表情を見せた。
初枝さんのめい、杵渕京子さん(59)によると、初枝さんを直接知る不二臣さんら4人のきょうだいは全員80代。いずれも、この数年で認知症による記憶障害や理解力の低下が目立つようになった。
日赤の資料によると、初枝さんは1944年7月、朝鮮半島北部の会寧陸軍病院に配属され、その後、戦病死したとされる。公表された名簿によると、死亡場所は興南地域で、死亡年月日は46年12月8日。25歳だった。
厚労省が北朝鮮などでの死亡者名簿をロシア側から入手したのは2006年。杵渕さんは「最期をうかがい知る貴重な情報だ」としながら「もっと早く知らせてくれればよかったのに」と悔しがる。
千葉県松戸市の阿部昌子さん(78)の父、守田一雄さんは、一家で暮らしていた旧満州で1945年5月ごろ、軍に召集された。当時41歳だった父の消息が分からないまま終戦を迎え、家族は日本に引き揚げた。現在の北朝鮮にあった「古茂山収容所」で父が戦病死したとの公報を受け取ったのは47年のことだ。
ただ厚労省が今回公表した名簿には古茂山収容所は含まれていなかった。昌子さんは「遺族は高齢化しており、他の名簿も探して早く公表してほしい」と訴えた。〔共同〕