広島空港で4月に起きたアシアナ航空機の事故で、運輸安全委員会は13日、事故機のフライトレコーダーを解析した結果、パイロットが着陸をやり直す操作を行い、その約2秒後に計器着陸装置(ILS)のアンテナに衝突したと明らかにした。事故の約1分前から、高度が標準経路より低くなっていたことも分かった。
当時は滑走路の視程(見通し)が急速に悪化し、事故が発生した頃は約300~400メートルしかなかったことが分かっている。運輸安全委は、パイロットが着陸やり直しを試みた理由や、気象変化の影響などを調べる。
運輸安全委によると、事故機のパイロットは着陸約1分前の午後8時4分ごろ、空港の約6キロ手前で自動操縦から手動に切り替えた。その後機体は徐々に高度を下げ、標準的な経路より低いコースを飛んだ。
着陸最終段階では、エンジンの出力を上げて機首を上に向ける操作が確認された。「客観的にみて着陸をやり直す操作」(辻康二首席航空事故調査官)という。その約2秒後、滑走路端から325メートル手前にあるILSの無線設備のアンテナ(高さ約6.4メートル)に衝突。その手前にある進入灯(同約4メートル)にも接触した可能性があるという。機体は着陸したものの、滑走路を大きくそれ、進入方向とは逆向きに停止した。
着陸やり直しの操作をしたのは、無線設備から約130メートル手前の地点とみられる。着陸直前に高度が急激に下がった形跡はなく、下降気流が発生した可能性は低いという。
事故機からは操縦室での会話などを録音したボイスレコーダーも回収されているが、内容は公表しなかった。運輸安全委はボイスレコーダーや乗員らの聞き取りの結果などを踏まえ、さらに事故原因を調べる。
事故は4月14日午後8時すぎに発生した。ソウル発のアシアナ航空162便エアバスA320が着陸に失敗。国土交通省によると、乗員・乗客計27人が負傷した。