今から3年前、経済制裁によってイランへの自動車供給ができなくなったとき、フランスの自動車大手プジョーシトロエングループ(PSA)は同社にとって世界第2位の市場に対するアクセスを失った。PSAはそれまでイランで年間50万台近い車を販売していた。
だが、不思議なことに、その後もプジョーブランドの車の販売は好調だった。自動車登録データとPSAに近い関係者によると、イラン国内でのプジョー車の新規登録台数は昨年1年間だけで約30万台に上った。プジョーの部品キットを使い、現地で自動車を組み立てたパートナー企業群は、よそから部品を調達していたようだ。
PSAの工場で生産される車両。同社は4月、15年1~3月期の収益が増加したと発表した(パリ近郊)=ロイター
PSAに近い複数の関係者によれば、自社ブランドでのこうした販売について同社にできることはほとんどないが、この事例は、制裁が撤廃され始めた時にPSAが再び稼ぐことのできるお金を浮き彫りにしている。
PSAは先月、折半出資の合弁会社設立に向け、イラン・ホドロと拘束力のない合意文書に署名した。自動車を可能になったらすぐ共同生産するためだ。PSAに近い複数の関係者が明らかにした。
PSAは、イランの核開発の野望を抑える暫定合意がまとまった後、イラン市場復活に備えている幾多の欧州企業――工業、エネルギー、金融企業を含む――の1社だ。核開発を巡る最終合意は6月30日の期限までにまとめられる必要があるが、すべてが計画通りに進めば、外国の貿易と投資に対する制裁が緩和され始めるはずだ。
■トタル、PKN…エネルギー各社が期待
欧州最大級の企業の一部が地固めをしており、エネルギーが最も有望な部門の一つだと見なされている。
フランスのエネルギー大手トタルの最高経営責任者(CEO)、パトリック・ポウヤン氏は4月、「もちろん」、イランへの再進出を検討しているとし、「イランはロシアに次ぐ世界第2位のガス埋蔵量を誇っており、我々は制裁が撤廃されたときにこの国に戻ることを検討する」と述べた。イランは石油埋蔵量でも世界第4位の規模を誇る。
1995年から2000年にかけて、トタルはロシア、アジアのパートナー企業とともにイランで20億ドル規模のガス開発プロジェクトを運営していた。同社によると、今後の計画についてはまだ何の決断も下されていないという。
イラン石油相で、1990年代にトタルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、イタリア炭化水素公社(ENI)、ノルウェーのスタットオイルを説得し、米国による制裁にもかかわらず石油・ガス産業に投資させたビジャン・ナムダル・ザンギャネ氏は、投資の受け入れに前向きであることを明確にしている。