【上海=小高航】中国・湖北省の長江で1日夜に乗員乗客456人を乗せた客船が転覆した事故は、2日夜で発生から24時間が過ぎた。新華社などによると、7人の死亡が確認され、14人が救助された。船内に多数が閉じ込められているとみられ、400人超の安否が不明。救助活動は難航している。公安当局は救助された船長と機関長を拘束し、原因究明を進めている。
中国湖北省の長江で、転覆した旅客船から救助される乗客(2日)=新華社・共同
転覆した客船は重慶市の「重慶東方輪船公司」が運営する「東方之星」(定員534人、2200トン)。1994年の建造で、全長約76メートル、幅11メートルの4階建て。5月28日に江蘇省南京市を出発して重慶市に向かっている途中だった。
乗客乗員は一時458人とされたが、2日夜に456人と修正された。乗客は長江の景観を楽しむ「三峡巡り」のクルーズ客が中心で、高齢者が大半を占めるとの情報もある。日本人の乗船は確認されていない。
現場には人民解放軍や武装警察が出動。楊伝堂交通運輸相は2日、記者会見し「4千人と110隻の船を出して捜索に当たっている」と述べた。
現場の水深は15メートル程度。中国国営中央テレビの映像では、船底がわずかに水面上に出る形で沈んでおり、救助隊が船底をたたいて生存者を確認する様子が報じられた。船内からは救助を求める反応があるとみられ、今後、船内に閉じ込められた生存者の救出が進む可能性がある。
公安当局は船長と機関長を拘束し事故時の状況を聴取しており、地元メディアによると「急な竜巻に襲われ転覆した」と話しているという。当時、現場付近は天候が悪く、風雨が強かったとされる。
事故を受け、習近平国家主席は救助作業に全力を尽くすように指示。李克強首相が指揮を執るために現場に入った。
2014年4月に韓国で発生し300人超が死亡した旅客船セウォル号沈没事故は政治問題に発展した。中国政府は迅速な対応を強調することで、批判の矛先が政府に向かうことを避けたい構えだ。
ネット上では早期の救出を望む声に加え、「セウォル号と同じ展開だ」「政府が短時間で(竜巻が原因だと)決めつけるのはおかしい」といった書き込みが見られた。