漫画家、水木しげるさん(93)が、太平洋戦争に出征する前年に書き残していた手記が見つかったことが3日までに分かった。
「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ妖怪漫画で知られる水木さんは、「総員玉砕せよ!」など南方での戦争体験を基にした作品も多い。手記には、死の恐怖に直面して揺れる心境がしたためられている。
水木さんは1942年(昭和17年)に徴兵検査に合格し、翌年に南方の激戦地へ出征した。A4サイズの400字詰め原稿用紙38枚の手記は、記された日付などから、42年11月ごろに書かれたとみられるという。
手記で水木さんは「毎日五萬も十萬も戦死する時代だ。(略)今は考へる事すらゆるされない時代だ」と出征前のやりきれない思いを吐露。また「心の底には絵が救ってくれるかもしれないと言ふ心が常にある」ともつづられ、戦中も好きだった絵が水木さんのよりどころとなっていたことが分かる。
手記は5月26日、長女で水木プロダクション社長の原口尚子さんが東京都調布市にある同社事務所で昔の手紙を整理していた際に、引き出しの中から見つかった。〔共同〕