ソフトバンクは3日、韓国のインターネット通販大手、フォワード・ベンチャーズ(ソウル市)に出資すると発表した。同社が7月上旬に実施する10億ドル(約1240億円)の第三者割当増資を引き受ける。出資比率は非公表だが5割未満の見通し。韓国のネット通販市場は競合が激しいが、スマートフォン(スマホ)経由の取引が中心のフォワード社は成長余地が大きいと判断した。ソフトバンクによるアジアのネット企業への投資は一段と加速しそうだ。
フォワード・ベンチャーズは2010年の設立。「クーパン」の名称でサービスを展開しており、売上高に占めるスマホ経由の利用が75%と高いのが特徴だ。同社は増資で得た資金を配送網の整備などに充てる。ソフトバンクによる出資後も筆頭株主は創業者のままで、経営陣も変わらないという。
韓国の2014年の電子商取引(EC)市場規模は業界推計で約5兆円と、年2桁の伸びが続いている。米アマゾン・ドット・コムこそ事業を始めていないが、地元資本同士を中心に激しい顧客獲得競争を繰り広げている。
その中にあってフォワード社は専用アプリ(応用ソフト)のダウンロード数が累計2500万以上に達するなど急成長している。スマホ経由が多いうえ、自前の配送網を整備しているといった強みを持つ。
米大手ベンチャーキャピタル(VC)のセコイア・キャピタルグループなども出資しており、ソフトバンクも今後の事業拡大の余地が大きいと見て投資を決めた。
ソフトバンクはバイスチェアマンを務めるニケシュ・アローラ氏が経営に参画した昨秋以降、アジアのネット関連企業への投資を加速している。特に市場の急拡大が見込まれるネット通販の分野への関心は高い。
昨年11月にはインドの大手スナップディール、同12月にもインドネシアのトコペディアに相次ぎ出資した。ソフトバンク子会社のヤフーは今夏にも、ソフトバンクが3割強を出資している中国最大手アリババ集団と連携し、日本製品をアリババの通販サイトで販売する計画だ。
今回のフォワード社もアローラ氏が主導した案件で、同氏は投資に先駆けて5月末にフォワード社の取締役にも就いている。今後もグループ全体でアジアでのネット事業を拡大していく。