日本経済新聞デジタルメディアの総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が6月8日発表した2015年1~3月期の実質国内総生産(GDP、2次速報値)を織り込んで予測したところ、15年度の実質成長率は1.6%、16年度は1.8%の見通しとなった。
1~3月期の実質GDP成長率は前期比1.0%増(年率換算で3.9%増)。設備投資や在庫投資が上方修正され、1次速報から0.4ポイント(年率換算では1.5ポイント)の上方修正だった。
4~6月期の日本経済は、消費や輸出の低迷が響き減速するが、停滞は一時的なものにとどまる見込み。7~9月期以降、消費は緩やかな拡大基調に戻り、輸出も堅調に推移する見通しだ。
■消費は4~6月期に一時的に減速
GDPベースの消費と似た動きをする消費総合指数は、4月は前月比1.1%減となった。内閣府が6月9日に発表した5月の消費者態度指数は2カ月連続で前月より悪化し、内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直している」から「持ち直しのテンポが緩やかになっている」に下方修正した。昨年7~9月期以降、GDPベースでは3期連続で前期比0.4%増の回復を続けてきた消費だが、4~6月期は減速しそうだ。本予測では、4~6月期の消費を前期比0.2%増と見通している。
ただ、雇用や所得環境は良好なことから、消費の減速は一時的なものにとどまる見込み。4月の有効求人倍率は23年1カ月ぶりの高い水準をつけた。また、4月の実質賃金指数は前年比0.1%増と2年ぶりに前年を上回った。夏のボーナスも所得の伸びを支える見込みだ。本予測では、7~9月期以降の消費は緩やかな伸びが続くとみている。15年度の消費は前年比1.4%増、16年度は同1.8%増となる見通しだ。
■輸出も足踏み後に回復
日本銀行が算出した4月の実質輸出は、前月比1.5%増だったが、1~3月期平均に比べると0.7%減少した。実質輸出は、春節の影響もあって2月に前月比6.4%減と大きく落ち込んでおり、4月時点でもそのマイナスを埋めるには至っていない。本予測では、4~6月期のGDPベースの輸出を前期比横ばいに下方修正した。
ただ、海外経済が底堅いことから、7~9月期以降の輸出は堅調に推移する見込みだ。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した5月の米製造業景況感指数は、7カ月ぶりに前月を上回った。米労働省が発表した5月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比28万人増加した。景気の下振れが取り沙汰される中国も、5月の小売売上高や工業生産の伸び率が僅かながら4月を上回ったほか、中国国家統計局と中国物流購入連合会が発表した5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は3カ月連続で景気判断の節目となる50を上回った。本予測では、15年度の日本の実質輸出を前年比5.6%増、16年度を同4.4%増と見込んでいる。
■設備投資は製造業がけん引
5月30日に日本経済新聞社がまとめた15年度の設備投資動向調査では、製造業が前年比17.3%増の見通しとなり、非製造業の同2.0%増を大きく上回った。円安定着を背景に国内生産に回帰する動きが出ている。本予測では、GDPベースの設備投資は4~6月期以降も増加が続くとみている。15年度、16年度ともに前年比3.6%増になる見通しだ。
(日本経済新聞デジタルメディア 渡部 肇、堀口 亜希子、萬年 美樹、田中 顕)