【アテネ=竹内康雄】欧州連合(EU)が求める財政緊縮策の受け入れについて賛否を問うギリシャ国民投票が5日、始まった。直近の世論調査では賛成と反対が拮抗しており、結果は予断を許さない。賛成の場合はEUなどによる支援の再開に道が開ける。逆に反対が上回れば、ギリシャのユーロ圏からの離脱が現実味を帯びる。
投票後、記者の質問に答えるギリシャのチプラス首相(5日午前、アテネ市内)=写真 浅原敬一郎
投票は午後7時(日本時間6日午前1時)に締め切られる。即日開票され、大勢は深夜(同6日朝)に判明する見通しだ。有権者は18歳以上の約985万人。投票率が40%を超えなければ、結果は無効になる。
国民に反対票を投じるよう求めているチプラス首相は午前10時半ごろ、アテネ市内で投票を終えたあと記者団に「人々の決意は恐怖のプロパガンダに打ち勝つだろう」と語った。パブロプロス大統領は「結果はどうあれ、あすには国民は団結しよう」と呼びかけた。
ギリシャの民間調査会社が3日公表した世論調査によると、受け入れ賛成は44.8%、反対は43.4%だった。預金引き出し制限など資本規制の導入で国民生活は厳しさを増しており、賛成派が勢いづいているとの見方もある。ただ、11.8%はまだ態度を決めておらず、結果はどちらに転んでもおかしくない。
賛成多数の場合、EUや国際通貨基金(IMF)などは新たな支援交渉に応じる方針だ。ただ、チプラス首相は辞任の考えを示唆しており、政局が混乱すれば交渉が遅れるおそれもある。
反対が上回れば、チプラス首相は国民の支持を背景に、EUなどに緊縮策の緩和や債務減免などを求めるとみられる。
だが、首相への不信感を強める債権団は交渉に応じない可能性が高い。支援を得られなければ、ギリシャ国内のユーロは枯渇する。国民生活や銀行を守るために事実上の自国通貨を発行せざるを得ず、ユーロ圏からの離脱につながりかねない。
投票用紙には「(6月)25日のユーロ圏財務相会合で欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、IMFによって示された合意案を受け入れるべきか」と記され、有権者はイエスかノーで選ぶ。